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開催レポート

2020年2月22日開催
第15回女性スポーツ勉強会より 報告 その2:マセソン美季さん編

第15回女性スポーツ勉強会のテーマは「2020オリンピック・パラリンピックイヤーだからこそ考えよう。スポーツにできること」というものでした。

ご登壇いただいたのはSDGsの専門家でいらっしゃる田瀬和夫さん、IOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)で教育委員を務める長野パラリンピックアイススレッジ金メダリストのマセソン美季さん、リオデジャネイロオリンピック柔道金メダリストで現在筑波大学大学院を卒業された田知本遥さん、産婦人科のスポーツドクター高尾美穂医師、そして総合コーディネータは宮嶋泰子でした。
今回からシリーズで、この勉強会の概要をお伝えしていきます。

第二回はマセソン美季さんによる「パラリンピックで世の中を変えたい!」です。

カナダのオタワに住んでいるマセソンさんは、障がい者に対する目線がカナダと日本では違うといいます。障がいを持った人も住みやすい社会になるための教育プログラムを開発して、全世界に展開中の活動はまさに「種まく人」の行動そのものです。

東京学芸大学1年まで柔道をしており将来は教師を目指していた。居眠り運転のトラックにはねられ車いす生活に。
1998年長野パラリンピックアイススレッジレース金メダル獲得後イリノイ大学に留学。その後、カナダ人男性と結婚し二児の母となる。
IOC国際オリンピック委員会、IPC国際パラリンピック委員会教育委員。
日本財団パラリンピックサポートセンタープロジェクトマネージャー。

パラリンピックとはどんな大会なのか

田瀬先生の講演を伺い、SDGsに対する考え方が変わってきましたが、今日は、用意してきたものそのままをお伝えします。

私が1998年長野パラリンピックに出場したときは、まだ報道の取材記者でさえ「パラオリンピック」と間違えて言う時代でした。

パラリンピックは元々、傷痍軍人のリハビリのためにスポーツを取り入れて始まったものです。ロンドンの郊外にある病院に勤務するドイツ人の医師が「スポーツは、体力だけではなく自尊心を取り戻すことにも有効」と、基盤を作りました。

病院発祥のスポーツ大会が発展し、1960年にローマで開催された大会が、のちに第一回のパラリンピックとみなされることになりました。
最初は、脊椎損傷といった車いすの選手だけが対象でしたが、今年の夏に行われる東京大会では、22競技539種目およそ4,400名の選手が日本にやってきます。
パラリンピックは、世界三大スポーツイベントの一つとされています。
三つというのはオリンピック、サッカーワールドカップ、そしてパラリンピックです。昨年日本で行われて大変盛り上がったラグビーワールドカップ大会は、パラリンピックの次に4番目に大きな大会と言われているので、このパラリンピックがどれだけ大きな大会かがご理解いただけるかと思います。

すべての人にはスポーツをする権利があり、それは障害の有無に関係ありません。

パラリンピックでは、選手たちが最大限の力を発揮できるように、ルールや用具やサポートの仕方など様々な工夫が見られます。2016年のリオ大会のハイライト映像を見ていただき、どんな工夫があるかご注目ください。

パラリンピックは社会変革を起こす大会

障害がある人がスポーツに参加することでSDGsにどんな影響があるのでしょうか。

パラリンピックは社会変革を起こす大会でもあります。
インフラの整備、人々の意識の変革がこれまでもありました。

1992年バルセロナでの大会では街の中のアクセシビリティが向上して、これを機に観光都市として発展していきました。
2008年北京大会では14,000の施設のバリアフリー化を推進。同時に、障害のある人達へのネガティブなレッテルを払拭しました。
2012年のロンドンパラリンピックでは史上最高の大会と言われて278万枚のチケットが完売しました。障害のあるアスリートの可能性を誇示しただけではなく、イギリスの国民の2/3以上の障害に対する人への意識を変え、結果として、イギリスにおいては100万人以上の雇用が促進されたという報告もあります。

国際パラリンピック委員会は、国連のスポーツを通じた気候行動にも参加して、パラリンピックムーブメントの中で、SDGsを推進しています。パラリンピックは11目標に貢献し、2019年にはSDGsアクションアワードを受賞しています。

パラリンピックの選手たちは不可能を可能にすることを得意とする人たち

さて、SDGsの達成には、地球レベルで変革を起こす必要があります。

既存のテクノロジーやレギュレーションを変えていかなければなりません。時には不可能だと感じることもあるかもしれません。パラリンピックの選手たちは、不可能を可能とすることを得意としています。選手たちのように、できない理由を探さず、どうすればできるのかを考える想像力豊かな力があれば、社会変革を起こせると考えています。

今、自分が取り組んでいる活動について

ここから少しだけ、現在取り組んでいる活動について説明しさせて頂きます。

パラリンピックを題材に、共生社会への気づきを促す教材の開発・普及啓発です。アギトス財団が開発した国際パラリンピック委員会の公認教材『I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル)』は、日本が世界に先立って2017年に導入しています。教材は、国内全ての小中高・特別支援学校等へ、日本財団パラリンピックサポートセンターが無償で提供しています。

パラリンピックの歴史等を含めた魅力以外にも、選手たちが競技場以外でも活躍できる社会はどうすれば作れるのかを学んでもらいたいと思っています。
東京2020大会がきっかけで、障害理解が促進し、より多くの人にとって居心地のいい国、「日本」になってくれたら嬉しいです。

もっと女性にスポーツの機会を!
女性の力がSDGsを促進する

最後に、障害のある女性のうち93%の方がスポーツに参画できていないという事実を共有します。スポーツは人を強くします。スポーツで得た力を、様々な場面で役立て、次の道を開拓していくこともできます。

でも、スポーツにたどり着くことすらできない人が、まだまだたくさんいるのです。近代オリンピックが始まったとき、女性のアスリートの参加は認められていませんでした。

参加したすべての国や地域から男性と女性が参加できたのは2012年のロンドン大会からでした。スポーツの世界でも男女平等というのは時間がかかっています。残念ながら、日本の社会では女性の地位は低いし、女性の声がなかなか届かないと感じます。

しかし同時に、パワーのある女性が発することで届いている声もあります。
2020年のこの大会が、日本の社会を変える大きなきっかけとなり、スポーツ界から始まる女性の活躍がSDGsを普及推進していく上でさらに大きな追い風となるように願っています。

私はパラリンピック教育を通じて、子供たちにインクルーシブ な考え方の種を撒く作業をしていますが、会場の皆様には、そこに水を撒いて肥料を与えながら一緒にその芽を育てていくお手伝いをしていただければと思います。
有難うございました。

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