JOC2021年度スポーツジャーナリストセミナー
テーマは「多様性について考える」
今年度の日本オリンピック委員会スポーツジャーナリストセミナーが行われました。主催は(公財)日本オリンピック委員会、日本スポーツ記者協会。
出席者は日本スポーツ記者協会会員、日本雑誌協会会員、JOC加盟団体広報担当、JOCアスリート委員会、JOC広報専門部会。リモートで100人ほどの方がご参加くださいました。
前回のセミナーは2018年の9月に行われ、ジェンダーバランス改善のための取り組みと題して、世界のメディアでは男子選手と女性選手の扱いをできるだけ公平にするように心掛けているという情報が伝えられていました。
今回はさらに一歩進んで、「多様性について考える」がテーマに選ばれました。
基調講演では、フェンシング元女子日本代表で、NPO法人東京レインボーブライド共同代表理事の杉山文野さんが、「スポーツ界の多様性を考える~LGBTの立場から~」と題して、心は男性なのに身体が女性になっていく苦しかった高校生時代のこと、カミングアウトするまでの葛藤など自分史を語ってくれました。フェンシングを選んだのは、ウェアーに男女の差別がなかったためとのこと。「多様な人というけれど、みな多様になりうることを忘れないで」とメッセージをくれました。現代社会では13人に1人はLGBTである実情を踏まえ、記事を書くときには正しい情報を基にきちんと相手のことを考えて書く必要があることを思わせてくれるお話でした。
学び①では日本パラリンピック委員会委員長の河合純一さんのお話。米国のヴェルナ・マイヤーズ氏によれば「ダイバーシティというのはパーティーに招待されること。インクルージョンというのはダンスに誘われること」と例えてくれ、ダイバーシティー(多様性)はイノベーションにつながってくるという話をされていました。これは私も同感です。過日ソニーの最高責任者でいらした出井伸之さんとお話をした時もそれがベースにありました。スポーツ界は産業界よりもダイバーシティーが進んでいるかもしれません。
さらに、学び②ではご両親がガーナ出身で日本生まれのバスケットボール女子日本代表候補選手の馬瓜(まうり)エブリンさんがリモートで登場。子ども時代に悪ガキに「チョコレート」と言っていじめられて大泣きしていた時に、「自分を愛するように他人を愛しなさい」と聖書を持ち出して慰めてくれた母親の話には、聞きながら胸が詰まる思いでした。
最後、東京2020大会からの情報提供として、「ジェンダー平等・多様性と調和の推進に向けた取り組みについて」と題して、小谷実可子さんが組織委員会の実情を伝えてくれました。
最後に、私、宮嶋泰子はJOC広報専門部会副部会長として、締めのご挨拶をさせていただきました。
そこでは先週出会った驚きの出来事をお話しました。
日本スポーツ協会の機関誌スポーツジャパンに、ある競技の監督の談話として、「私が指導していた女子選手はプライベートで問題があった場合、パフォーマンスに直結することも少なくありませんでした云々」。この文章を読んだ読者は「やはり女子選手はプライベートでの問題がそのまま影響を及ぼすんだな」と思ってしまうのではないでしょうか。プライベートでの問題は男子でも女子でも仕事に影響を及ぼします。女子に限ったことではありません。「私が指導していた選手はプライベートで問題があった場合・・」で十分ではないでしょうか。しかし、指導者や記事を執筆したライターの中にアンコンシャスバイアスと呼ばれる「無意識の差別観」があると、このような文章を書くことになってしまいます。
無意識の差別をなくすために、意識的になることが必要です。
そのためには、できるだけ多くのメディア関係者にこの同録録画を見てほしいと呼びかけました。この日リモート参加された各社お一人がご覧になるだけでなく、より多くの現場の記者やデスクや編集の人たちが知ることが大切だと思っています。メディアと競技団体への公開は後日JOCから報告されることになっています。
以上、宮嶋泰子からの報告でした。