人生100年時代を生きる!ますます重要視される子ども時代の運動!
日本整形外科学会からの提言記者会見
人生100年時代にますます大切になってくるのが、子ども時代の基礎作りにあるようです。
登壇されたのは中嶋 寛之教授(東京大学名誉教授、日本体育大学名誉教授、横浜市スポーツ医科学センター顧問)と、鳥居 俊教授(早稲田大学スポーツ科学学術院 運動器スポーツ医学研究室教授)のお二人です。
この記者会見の要旨をまとめながら書いてみました。
2007年生まれの子どもの半数が107歳まで生きうる。
英国のリンダ・グラットンの著書ライフシフトによれば、2007年生まれの子どもの半数が、日本では107歳まで生きうること。 もう1つは、平均寿命世界1位の国をグラフ化すると、寿命が2年ごとに平均2ー3年のペースで上昇していること。 つまり、いま50歳未満の日本人は100年以上生きる時代を過ごす可能性が高いといえます。
そこで求められるのが100年耐用性のある骨と筋肉ということになります。
骨粗しょう症にならないために、丈夫な骨を作るためには10代のスポーツや運動が大切になってきます。飛んだり跳ねたりする骨への荷重刺激が必要不可欠というわけです。
体育の持つ役割が変化
人生100年時代になり、学校での体育の持つ役割が変わってきました。子どものスポーツ習慣を見てみると二極化が激しくなってきています。
スポーツをする子としない子がはっきり分かれてきています。体育嫌いな子どもは2割はいます。
女子の場合は初経が早くなってきており、12歳ぐらいから始まっています。
骨づくりは初経が始まる前から活発になり、10代でマックスになります。この時期にしっかり運動をしてほしいのですが、実際には体育嫌いな子どもがかなりいます。
体育嫌いはなぜ起きるのでしょう。
中学生と高校生を対象に体育嫌いを調査してみました。
好き嫌いという個人の気持ちの因子のほかに、教員や授業が嫌いという答えが返ってきました。
「パフォーマンスで評価されることがつらい。」
「苦手な子どもたちが低く評価されてしまう。」
「全員が同じことをしなくてはいけないことに苦痛を感じる。」
「運動着が嫌い。」
「体育の先生の考え方についていけない。」等の回答がありました。
体育を楽しいと感じてもらうためには、こうした要因を解消させるようなことが必要でしょう。能力別に分けて行うということも必要かもしれません。
押し付けるのではなく、子どもたち目線の体育が求められているのではないでしょうか。
また座学で、人生100年に対する体育の必要性を理解させることも必要かもしれません。
具体的な体育の方策を!
小学校では体育の先生が担任の先生であることがほとんどです。自分で手本を見せずに実技を教えることの大変さというのがあります。
では体育専門の教師が良いのかとなると、これは高圧的に指導してしまい、能力を伸ばすことにばかり集中するので、苦手な子は離れてしまうという問題点が出てくる場合があります。
運動が苦手な子どもの中には「運動音痴」という意識があるので、無様な格好を見せなくてはならない公開処刑というイメージを持つ人もいます。
難しい要素が絡み合っています。
教員の管理体制にも問題があるでしょう。担任の先生は子供をグランドに連れていって、技術は専門の先生がいるというような工夫を米国では行っています。予算のこともあるでしょう。
東京都の様に体育指導の補助員を入れるところもありますが、マンパワーと予算が必要とされます。
スポーツ庁も掛け声だけではなく、しっかりと自分たちでもやってほしいと、医学の立場から言いたいです。体育系の先生方から言っても聞いてもらえないので、医学界から言って欲しいと言われました。
時代と共に変わるスポーツ振興
1964年の東京五輪を契機として、大人のスポーツが中心に普及されてきました。
2021年の東京五輪。日本は体育に対する理解が未熟であると感じられます。記録や順位でスポーツが評価されています。楽しさなどを追及するように変わってほしいものです。
さらに、子どもの頃からのスポーツが超高齢化社会に備えた健康投資になるという文化になってほしいです。
科学的エビデンスに基づいたスポーツの振興が求められています。
肝心なことは・・・
要は、若い時により多くの骨を作っておいて、成人期に維持し、歳をとってからも減少の割合を減らすということです。一番増やせる時期に増やす。ある一定年齢になると骨量は落ちてくるので、その落ちる前の高さをできるだけ高くしておくということです。
身長が最も伸びた時期の前後5年間に多くの骨量が獲得されたと報告されています。特に女子においては将来に骨粗しょう症になることを予防するために、小学校高学年から中学校の時期に骨に刺激を与えるジャンプなどの運動を行い栄養をしっかり取り骨を作っていくことが求められます。
一つのスポーツに特化するよりも様々な運動を行うことが良いでしょう。一つのスポーツだけに特化すると、負荷がかかりすぎて問題が起きてしまいます。
最近は若年から一つの競技に絞ってアスリートを作ることが注目を浴びていますが、スポーツの早期の育成による問題は諸外国でも日本でも起きています。
日本整形外科医学会として求めること
★子どもたちが運動を楽しめるような環境を家庭、幼稚園保育園、地域で作っていく。
★人生100年を想定した学校体育を考え、教員養成のカリキュラムの充実をはかる。
★持続可能な運動習慣により持続可能な運動器の健康を図る。
以上、ますます子ども時代の運動の大切さ、そしてそれを楽しいと感じさせる仕組みづくりが重要であることがわかりました。