新型コロナウイルス拡大の中でスポーツ選手の驚くべき行動力 !プロサイクリストとトップテニスプレイヤー
コロナ禍とスポーツ選手
世界中を大混乱に陥れている新型コロナウイルス。インターハイをはじめとし、今シーズンの日本のスポーツイベントもほとんどが中止になり、2021年に向けての計画にも陰りが見え始めています。スポーツ選手たちの心境は穏やかではないでしょう。
そんな中、心が温かくなるニュースが入ってきたので、ご紹介しましょう。
プロ自転車選手が配達員?!
イタリアではこれまでに新型コロナウイルスにかかり151人の医師が死亡したと伝えられてています。4月27日の段階での死者は2万6977人。特に深刻なのが、イタリアの中で最も裕福で最も人口が多いロンバルディア州です。3月の下旬には3分35秒ごとに感染者が死亡し、火葬が追い付かず犠牲者の棺が倉庫に並べられるという状況でした。
そんなロンバルディア州のロデットという町で、一人のプロ自転車選手がコロナ禍の中で助けを必要としている人や高齢者のために、自転車で薬などを運んでいるという情報が入ってきました。26歳のダヴィデ・マルティネリ(Davide Mrtinelli)です。
ロデットの町にはスーパーマーケットも薬屋もありません。そこでダヴィデは近隣のロヴァトまで、皆に頼まれたものを買い出しに出かけています。移動はもちろん自転車です。プロの自転車選手にとっては苦にならない10キロほどの距離ですが、自ら進んでやる勇気が素晴らしいですね。もちろん品物の購入の際や受け渡しの時には完全防備で感染には細心の注意を払っています。
ダヴィデはこう言います。「シーズン中に応援してくれる人たちのために、今こそ、僕が助ける番だと思ったんです。恩返しをする時です。」
ロデットの人口はわずか1500人で、皆がマルティネリを知っています。というのもダヴィデのお父さんのギウセッペ・マルティネリはツール・ド・フランスで優勝したマルコ・パンターニやヴィンセンゾ・ニバリなどのチーム監督として自転車界ではとても有名な人物だからです。父は息子をどう思っているのでしょうか。
「今、ダヴィデがやっていることは自分のチームの選手が勝つことよりもずっと素敵なことだね」と言ったそうです。
暗い話題が続くイタリアのロンバルディア州、ぽっと心が温まるお話でした。
テニスの王者も弱者救済
AFP(フランス通信社)によれば、男子のテニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチが、ロジャー・フェデーラやラファエル・ナダルとのビック3で、新型コロナウイルスによるシーズン中断に苦しんでいる選手たちを救済する策を考えているそうなのです。
確かにテニスのシーズンは3月の上旬から止まっており、再開もいつになることやらめども立っていません。ジョコビッチのよれば、200位から1000位までの選手たちは協会のサポートも得られないし、スポンサーもいないので、このままではテニスから離れることを考えているとのこと。
そうした下位の選手たちを助けるための仕組みを、ATP(男子プロテニス協会)、ATP選手会と、グランドスラムが協力し合って救済基金を作って、ATPが分配する方法を計画中とのことです。ちなみにジョコビッチはATP選手会の会長を務めています。
ジョコビッチの言葉が素敵です。
「彼らはテニスの草の根であり、未来だ。トップ選手のサポートに頼ってもいいということをわかってもらいたい」
サポートを押し付けるのではなく、「サポートに頼ってもいいんだよ」と説得するあたりが素敵ですね。
金額的には300万ドルから400万ドル(約3億2300万円~4億8400万円)を分配したいということです。
真のヒーロー
スポーツ選手は自分を客観視することで成長していきます。コロナ拡大という未曽有の緊急事態の中で、弱者に目を向けることができ、社会の中で自分が何をすべきかを判断し、それを実行に移していく選手の話を耳にすると、選手たちの栄光の姿以上に感動するものがあります。彼らこそ真のヒーロと呼ばれるに値するのでしょう。
これぞ人間力ですね。
(2020年4月28日 宮嶋泰子)