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2020.11.27
スポーツ・芸術・文化 世界の国から

オランダのコロナとスポーツ~スケート愛はコロナに負けず~

オランダのスポーツ選手たち

今になって思えば、今年の3月初旬、オランダで行われたスピードスケートワールドカップファイナルは、最後の打ち上げ花火の様な賑やかな大会でした。 新型コロナの感染拡大が懸念されつつも、まだ今程深刻ではなかった時期です。 オレンジで埋め尽くされた、満員の会場での熱狂。 顔なじみの日本の選手との嬉しい再会。 まるで別世界での出来事の様に思い出されます。 そのすぐ後です、オランダもインテリジェントロックダウンが導入されたのは。

<立見席から埋まっていくヘレンフェーン・ティアルフのスケートリンク>

オランダのトップアスリートも、しばらく集団でトレーニングすることを禁じられていました。 特に東京オリンピックを目指している選手たちは大変だったと思います。 立ち止まっている時間はありません。 自宅の庭に大きめのビニールプールを設置して、身体をゴムで抑えて延々とその中で泳ぎ続ける(定位置で腕を回して脚をバタバタしている)水泳選手や、自宅に2階の窓から苦労して長い平均台を入れている体操選手の姿など、その時期放送するものが無くなったスポーツ番組で報道されていました。

夏休み前には規制が緩和され、バカンス期間中大勢人が移動しました。そのせいもあり、欧州では秋以降コロナの感染拡大が止まりません。 欧州の小国オランダも、一時一日の新規感染者数が11,000人を超えました。 今は部分的ロックダウンの最中です。

運河が凍るとスケートを楽しむ、それがオランダ流

オランダはスピードスケート大国。 運河が凍ると、どこから出て来たの?と思うくらい、運河でスケートを楽しむ人々で一杯になります。氷上でスープやコーヒー、ココア、クッキーなどの露店を出して小遣い稼ぎをする人も出てきます。これがオランダの厳しい冬の楽しみ方。

<2012年撮影>

オランダには11都市スケートマラソンと言う大会があります。オランダ北部の11都市を結ぶ運河、約200kmをスケートで周るというもので、極寒で運河が完全に凍った冬に限り行われます。

毎回冬季オリンピックの度に話題になるのが、オリンピック期間中その大会が開かれたらどちらに出場するか、と言うこと。長距離スケーターにとってはオリンピックよりも11都市スケートマラソンのほうが価値があると判断されることもあるのです。

11都市スケートマラソンが最後に行われたのは1997年1月ですから、もう20年以上も前のことになります。かたやオリンピックは4年に1度。 冬季オリンピックでメダルを量産するスピードスケートの選手達ですが、11都市スケートマラソンが開かれたら、オリンピックを辞退する選手も出てくるかもしれません。 オランダ人にとってはそれだけ価値がある大会なんですね。

この11都市スケートマラソンも、運河が凍る前から今年は早々と「運河が凍ったとしても開催しない」と発表になりました。お互い1.5mの間隔を開ける、などのコロナの安全対策を講じることが出来ない、と言うのが理由だそうです。「今年もだめか」と肩を落としているオランダ人の姿が目に浮かびます。 こんなところにもコロナが影を落としています。

<最近は地球温暖化のせいで運河が凍ることが少なくなっている>

オランダスケート連盟が国際大会をまとめて引き受ける!

さて、スピードスケートですが、コロナ禍で各国を転戦するのは不可能、と言うことで、 2020年中のワールドカップは全てキャンセルになりました。 実はオランダは早くから、ワールドカップ前半戦を全てオランダで開催する、という代替案を国際スケート連盟に提示していました。 しかし、安全面の不安からこの案も却下。 でも諦めないのがオランダです。

11月初めに行われたオランダ距離別選手権を、無観客で、入場するスタッフも最小限に抑え、無事感染者を出すことなく終わらせました。シーズン後半戦を睨んで試金石にするため、オランダスケート連盟も安全面では細心の注意を払ったんですね。 これが国際スケート連盟に認められて、2021年の1月から、欧州オールラウンドスプリント選手権、ワールドカップ2戦、そして北京で行われるはずだった世界距離別をオランダに誘致することに成功しました。4大会も連続して国際大会がオランダで開かれます。

スケートファンは残念ながらテレビでのみ観戦、ということになりますが、大好きな選手達の活躍を観ることができるので、ファンはみな胸を撫で下ろしているのではないでしょうか。

もちろんファンの為だけにオランダスケート連盟が動いたわけではありません。 コロナで忘れられがちですが、今シーズンはプレオリンピックシーズン。 冬季北京オリンピックを前に、この時期自分たちの国際的な立ち位置を把握できないのは、選手達にとっても残念ですよね。 どの選手もコロナで制約のある中、体調、モティベーションの維持に苦労しているのではないでしょうか。 シーズン後半の目標が出来て本当に良かったです。 この一件で、「世界のスピードスケートを自分たちが引っ張っていくんだ」というオランダの気概を感じました。

 オランダのスケート愛はコロナに負けず! この国に来たばかりの頃は、スケート場で熱狂するオランダ国民に少々圧倒されていましたが、最近では一緒に楽しめる自分がいます。 コロナ終息後、またスケート場でオランダ人と大声を張り上げて、選手達を応援できる日が来ることを切に願っています。

Written by八木美保子

八木美保子さん


プロフィール

1991年7月、風車建設会社の4代目と結婚する為にオランダに移住。 その後、母一人で4人の子どもを育てる。長女の舞さんはオランダ公共放送のジャーナリスト。26歳の長男、開さんはカイ・フェルバイいう登録名で2017年2月の世界スプリント大会で総合世界記録をマークして総合優勝している。双子の暖さんと蓮さんは21歳の学生。

<八木美保子さんと4人の子どもたち>
<<八木家の裏には運河があり、子どもたちはその運河でスケートを始めた>
<1996年、家の裏の運河で氷初体験の開君。ここから世界王者の道が始まった!>
<お姉さんの舞さんの靴に注目!刃が二枚のスケートを靴に取り付けている>
<双子も運河でスケートを楽しんだ>

オランダスケート事情

最近は地球温暖化のためになかなか運河が凍ってくれない。そこでスケート好きは街にあるスケートリンクへと出かけていく。これらは2017年に撮影したものだが、開場する30分前からご覧のような列ができている。クラブ単位で来る年配者やご夫婦でペアルックで来る人達も見かけられる。

<スケートリンクに入るために、なんと長蛇の列が・・・>


<スケートの合間に仲間と一緒にティータイム。これが楽しいのなんのって。早くコロナが収束してまたみんなとお喋りしたいなあ・・・・・>
<街にはスケートバーがあり、こんなレジェンドたちの写真が飾られている>

オランダの人々のスケート愛は世界一!

いや、フィギュアスケートを追いかける日本の女性パワーも世界一!?

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