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2021.02.15
スポーツ・芸術・文化 世界の国から

9年ぶりに本格的に運河が凍ったオランダはスケートでお祭り騒ぎ!

Reported by 八木美保子

久々に訪れたオランダの熱狂

11月にオランダ人のスケート愛について寄稿させていただきましたが、今回はその第2弾。 久々に訪れたオランダの熱狂について書かせていただきます。 

オランダが10年に一度と言われる寒波に見舞われたのは2月6日から7日にかけてのことでした。

オランダ王立気象研究所は深夜からコードレッドを発令し、不要不急の外出を控えるように呼びかけました。オランダは雪が降ることも少ないので、雪が降ると途端に交通網がマヒします。電車は全線不通、多くの交通事故も発生しました。 

こうなると日常生活に支障をきたしますが、何故か血が騒ぎだすのがオランダ人。 終日氷点下の日が続くことを確認すると、運河が凍るぞ!とソワソワし始めるんですね。

そして、全オランダ国民の願いが叶って、本当に久しぶりに凍りましたよ! 

ほぼオランダ全土に天然のスケートリンクが出現しました。 

それはもう見事です。 

今までコロナで外出を控えていた人たちも、老若男女を問わず氷に覆われた運河に出てきます。

乳母車を押して散歩をする人、自転車に乗る人、子供にスケートを教える人、アイスホッケーを楽しむ人、アイスセーリングをする人… 

天然のスケートリンクの楽しみ方も人それぞれで、青空社交場と化します。

ところで皆さんはディックブルーナのミッフィーの絵本をご覧になったことありますか? 

ミッフィーが乗ってるソリには、木枠の下に金属が付いていて滑りやすくなっています。

小さい子供達が乗ったこのソリを、お父さんやお母さんがスケートしながら引っ張っている光景もよく見られます。 

人々の楽しみを陰で支える人たち

さて、子供達が属する村のアイスクラブにはアイスマスターと呼ばれる人がいて、運河に氷がはると、定期的に氷に穴をあけて氷の厚さをチェックして回ります。

<オレンジ色のパーカーを着ている人がアイスマイスター。手には氷の厚さを測るドリル>

アイスマスターによれば我が家の裏の運河は7cmの厚さだったそうです。 

氷の薄いところにはテープが張られて、通行者の注意を促します。 

運河の安全は、こう言う地元のボランティアに支えられています。 


私も彼らのお陰で4日間程思いっ切りスケートを楽しむことが出来ました。 

最近では滅多にないチャンスなので、サロンパス、鎮痛剤などを駆使し、異常興奮状態で気合を入れまくって連日滑り続けました。

もう疲労困憊です(笑) 

スピードスケート長距離王国オランダの原点ここにあり。

現在もロックダウン中のオランダですが、運河が凍れば話は別、です。 

ソーシャルディスタンスなどの規制は守るようにとの呼びかけはあるものの、若者達がガンガン音楽を流して歌っていたり、温かいココアやクッキーを販売するお店が出現したり、話し声笑い声、実に賑やかです。 

知り合いと出会えば近況報告とともに行く先の氷の状態、安全なルートの確認、混み具合などの情報を交換。 

家族や友人と一緒におしゃべりしながら青空の元、風車や牧草地を眺めながらの運河めぐり。 

これほどオランダらしい娯楽はありません。 

楽しくて一日中でも滑っていられます。 

体力自慢のオランダ人は運河伝いに湖巡りをするので、リュックを背負って、スケートのエッジカバーを手に持って滑っている人を多く見かけます。

橋の下は凍りませんし、テープが張られている危険な場所はエッジカバーをして陸に上がって歩いて、また通行が可能な場所から氷に乗るため、エッジを守るカバーは必需品なんですね。

<橋の下は凍っていないので、エッジカバーをつけて陸を歩く>


私が住むローカル地域だけでなく、アムステルダムで町中の運河も凍って人々が氷上で楽しんでいた写真を友人が送ってくれました。なかなか見られない光景です。

スケート愛はコロナに負けない!

そんな中、コロナで医療現場が逼迫していると言うのに、転倒で骨折して救急に運びこまれる人が続出したそうな。

実は咋年の大晦日は、感染拡大及びやけどなどの事故で医療現場に負担がかかることなどを懸念して、恒例の打ち上げ花火は禁止されました。 

でも今回は、今までの経験から予め氷上での事故を予想して人員を確保していた、とのこと。 それでも救急が一杯になった現場もあったそうです。 

花火はダメでもスケートはいいんですね、オランダは。 やはりオランダではスケート愛はコロナに負けないのだな、と再確認した次第です。 

外でも家でもスケート三昧

週末にはオランダで世界距離別選手権が行われテレビで観戦。長男が世界距離別選手権1000mで優勝したのを確かめて、外でも中でもスケート三昧。 大変楽しい週末を過ごすことが出来ました。 

何と、陽気なオランダ人がこんな旗を持って我が家の庭に乱入してきました。長男、開が世界距離別1000mで優勝したのを祝ってくれたんです。

<オランダ+日本=金メダルの開君!>

このオランダのスケート愛、熱狂、開放感がなかなか紙面で表現できないのが非常に残念です。 昨年6月に日本からオランダに赴任してきた職場の上司は、やはりこの「熱量」は現地に住んでみないとわからない、と言っていました。上司はオランダ語が分からなくても、テレビやネットニュースを見れば、いかにオランダ人が運河が凍るのを待ち望んでいたかがわかる、と言っていました。 

次に凍るのは何年後になるでしょうか。 

<スワンもスケート状態>

今回はコロナで移動の制限がありましたが、次回凍ったらオランダに来て、スケートで運河巡りをしてみてはいかがでしょうか。

是非この熱狂を肌で感じて欲しいです。 

チューリップが咲く春もいいですが、私はオランダらしさが出るこの様な冬が好きです。

双子の息子と今回は一緒に滑りました。

八木美保子さん2020年11月27日の寄稿文はこちら↓

Written by八木美保子

プロフィール

1991年7月、風車建設会社の4代目と結婚する為にオランダに移住。 その後、母一人で4人の子どもを育てる。長女の舞さんはオランダ公共放送のジャーナリスト。26歳の長男、開さんはカイ・フェルバイいう登録名で2017年2月の世界スプリント大会で総合世界記録をマークして総合優勝している。双子の暖さんと蓮さんは21歳の学生。

<八木美保子さんと4人の子どもたち>

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