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2022.05.14

女性アスリートがスポーツでより輝くために シンポジウム抄録

2022年5月11日東京ビッグサイトで行われたJapan Sports Week 2022 ,
有森裕子さん、室伏由香さん、荒木絵里香さんの3人に、私、宮嶋泰子がファシリテーターとして1時間のシンポジウムが行われました。全てを記憶しているわけではありませんが、彼女たちの話や私からのメッセージを思い出しながらここでお伝えしていきます。

有森さんは自分の意見をしっかり持っていることで知られています。

選手時代からそうでした。

どうやったら指導者に自分が思っていることを伝えられるか懸命に考えたそうです。

有森さんを指導してきたのは有名な小出義男監督です。

小出さんは選手が鍼治療をするのを好みませんでした。

しかし有森さんは、鍼治療が必要だと感じていました。

何度も有森さんは小出監督に鍼治療の必要性を訴えましたが、小出監督は聞く耳を持っていませんでした。そこで有森さんは考えました。どうすれば小出監督が鍼について理解してくれるかと。

有森さんの鍼治療をしてくださっていたのは白石さんでした。

ある日治療に行った有森さんは白石さんの頼みます。

「白石さん、お願いがあります。今日の治療が終わったら、すぐ小出監督に電話をして私の状況を説明してもらえませんか」と。

白石さんはすぐさま小出監督に電話をします。そしてその日の治療について事細かに小出監督に報告したのです。

有森さんが戻るのを待っていた小出監督の最初の一言はこうでした。

「有森、白石さんから電話があったよ。いい人だねえ。よく有森のことを考えてくれている。詳しく説明してくれたよ。いい人だ、これからもどんどん治療してもらえ」

小出監督は非常に素直な方でした。この電話で有森さんは自分に鍼治療が必要であることを白石さんを通して小出監督に納得させたのです。

とかく日本の女子選手は指導者の言うがままになり、なかなか、自分の思いを伝えることができません。しかし、このようにどうすればわかってもらえるか作戦を練って自分なりの方法を考えていくことも大切なのです。

続いてはスポーツ庁長官の室伏広治さんの妹さんでもある室伏由佳さんです。

オリンピアンであり現在は順天堂大学で教鞭をとりながらドーピング問題や女性の身体の不調の問題の研究などもされています。
現役時代はハンマー投げや円盤投げで日本記録を作り続けてきた室伏さん。コーチはお父様のアジアの鉄人と呼ばれた室伏重信さんです。練習をしてもどうしても調子が上がらない時が続き、体調不良を訴えることが続きました。環境的には家族でスポーツをしているのですが、女性の身体の問題については父も兄も詳しくはなく、「休んだ方が良いよ」とアドバイスをしてくれる程度でした。実は由佳さんは、最終的には婦人科系の子宮内膜症を患っていることが後にわかったのですが、情報があまりにもなかったために、気づくのがかなり遅れてしまいました。現在は12/52プロジェクトという活動を伊藤英恵さんと共に活動しています。これは一年に12か月、約52日間平均で女性には月経があるということから表記しているものです。女性特有の疾患に対する情報がもっと当たり前に共有できるようにしたいと由佳さんは語ってくれました。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000062031.html

そして荒木絵里香さん。


バレーボールで4度のオリンピックに出場し、ロンドン五輪では銅メダルも獲得しています。実はロンドンの後、結婚出産をされています。さらには、この4月から早稲田大学の大学院に進んで研究活動にいそしんでいます。

こうした荒木さんの決断の裏には2008年の北京五輪後にイタリアのセリエAに行った経験が生きていました。日本ではバレーボールの選手たちは高校正の頃から皆耳を出した同じような髪形をして、個性を出すということがほとんどない環境でした。もちろんボーイフレンドなどご法度です。しかし、セリエAではボーイフレンドがいることなどオープンですし、さらには空いた時間でそれぞれが好きなことをやっていました。そんな自分自身で自分の人生を決定していくという自由さに触発されたのです。結婚、出産を経て再びバレー界に戻って日本代表に選ばれました。実は荒木さんはフィジカルの力もものすごく、全日本のアスレチックトレーナーによれば、チームで最も重いウェイトのトレーニングができる選手であるとのことです。本人は「私はスピードがないので、重いものを持ち上げるのでカバーしているだけです」と謙遜していますが、そうできることではありません。

さらに、荒木さんのスポーツ人生はご両親を抜きにしては語れません。お父様は早稲田大学でラグビー選手でした。またお母さまは体育の教員でした。そんな環境の元、小学校4年生で初めたバレーボール。楽しくて面白くて通っていたのですが、ある時、練習を見たご両親が、「こんなのスポーツではない!」と絵里香さんの手を引っ張ってそのクラブを退団させたのです。そこでは監督が選手をひっぱたくなど暴力が横行していました。バレーボールが面白くなり始めていた絵里香さんとしては正直驚いたという所だったようですが、このご両親の決断は見事と言わざるを得ません。

今どき、「あの監督はたまに暴力を振るうが、あそこに入れておけば強くなれる」と子どもの暴力を受けない自由を犠牲にしてまで強くなることを強いる親が存在する時代です。荒木さんのこうした環境は、自分が置かれている状況を少し客観的にみるという癖をつけてくれたのではないかと思います。

いずれにせよ今の荒木さんがあるのは、ご両親が、暴力を避けてスポーツをする楽しみを優先してくださったことが基本にあるのだなあと考えさせられるお話でした。

今は出産を経たアスリートのグループMANの理事をしています。現在ライフル射撃の中山さんが理事長を務めているグループです。今、NTCナショナルトレーニングセンターでは女性の出産前後のトレーニングプログラムなども作られるようになったとのことですので、少しは変わってきているようです。MANのFBはこちらからhttps://www.facebook.com/%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BAMAN-109308014013668/

実は私、宮嶋も、このMANの人々とディスカッションをした経験があります。日本の女子アスリートの出産に関する情報は恐らく先進国では最低と言っていいほどだと思います。


まず出産すると骨盤が広がってしまう為、身体のバランスがくるってきます。ラグビー選手で出産した後、骨盤が広がって脚がX客になってしまったため、膝に負担がかかり膝の靭帯を数回切って手術をしたという選手の話を聞きました。

フィギュアスケートの安藤美姫さんなどは出産後まず骨盤矯正から入ったようです。骨盤が広がるとスピンやジャンプの感覚が大きく変わってしまうからです。

また、出産後、尿漏れに悩む選手も多くいます。こうしたことに対する対策もこれからは必要になってくるのでしょう。

MANの皆さんとのオンラインディスカッション「ママになってもスポーツがしたい そのためには」の動画はこちらからご覧いただけます。
https://youtu.be/xjx2JVOKJ3w

荒木さんがイタリアのセリエAに行って、皆が自由であることに驚いたという話をしてくれた時、私もスペインのシンクロ戦選手を取材したことを思い出しました。彼女たちはCARと呼ばれる国立スポーツセンターに一年中住み込んでトレーニングをしているのですが、練習が終わると各人自分の部屋で思い思いに過ごします。ある選手は弁護士になりたいと懸命に勉強していました。ある選手はインテリアデザイナーになるんだと言っていました。またお姉さん格の選手はすでにジュエリーデザイナーやモデルとして活躍していました。選手であると同時に自分自身がやりたいことを希求している選手たちの姿があり、あまりに日本と異なることに驚いたことを思い出しました。


女性のスポーツに対する情報や外国の選手の姿などの情報は、あるところにはあるのでしょうが、それが現役の選手たちに届いていないのは残念なことです。カルティベータでも少しずつ、女性スポーツについての情報を発信していきたいと思っています。

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