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2023.05.18

2013年、セクハラ根絶明記を提案したこと。

2013年に日本の5つにスポーツ団体が暴力行為根絶宣言をしてから10年がたちました。日本のスポーツ界がどう変わってきたのか、しんぶん赤旗から取材を受けました。

(スポーツ部=前野)

スポーツの明日

▽宮嶋泰子さんインタビュー 「セクハラ根絶」10年前の提起

 2013年4月25日にスポーツ競技団体関係者や選手ら821人が出席した集会で採択された「暴力行為根絶宣言」は、セクシャルハラスメントを暴力行為の一つにあげ、根絶を掲げました。

 しかし、実はその集会で最初に示された文案には、セクハラの文字はありませんでした。日本体育協会(現日本スポーツ協会)生涯スポーツ推進専門委員として参加した私が「セクハラを暴力行為の一つとして明記して」と会場で手を挙げて提案し、拍手で承認され、追加されたものです。

この集会のために事前に用意された文案を作る会議では、セクハラは話題には上ったようですが、けっきょく文案には盛り込まれませんでした。つまり、当時はまだスポーツ界で物事を決定する立場の人の中では、セクハラが問題の一つという認識が低かったのです。

 私は43年間、テレビ朝日のスポーツ担当として、女性アスリートを多く取材してきました。かなり初期の段階から、セクハラがスポーツ界に当たり前のように存在することに気付き、大問題だと感じていました。そこで、あの会場での提起となったわけです。

 スポーツは、選手が試合に出るためには指導者に従う形になりやすい。身体の線が出る薄いウエアを着ることが多く、身体を触られながら指導やケアが一対一で行われる機会が多い。国内外に長期遠征があり、家庭から切り離されて外から見えない部分がある。厳しく指導されるなかで、誰かに慰めてほしいという気持も生まれる。一般社会以上にセクハラが起きやすい環境があるのです。私自身、取材の中でチームに帯同する女性からセクハラを受けたと訴えられたこともあります。

 採択された宣言から10年たちますが、セクハラがスポーツ界に多く存在し、それを排除すべきだという認識は少しずつ浸透してきていると思います。セクハラ被害を訴えるMeToo運動の広がりなど社会全体の影響もあります。私は全日本柔道連盟のコンプライアンス委員を務めていますが、指導者向けの暴力防止の教材は、セクハラについて詳しくふれています。研修会の講師も務めるなかで、認識が進んでいると感じています。指導者が絶対で、選手は従うことが良いという、そんな関係も変わりつつあります。

 日本スポーツ協会は暴力などの相談件数を年度別に公表していますが(2022年度は373件)、セクハラは全体数の3~6%となっています。セクハラは特に声を上げにくいことを考えると、実態はもっと多いでしょう。被害者の心に後々まで傷を残すのがセクハラです。なくすために徹底した取り組みが必要です。

 私は、そもそものスポーツのあり方も問いたい。日本は競技スポーツを中心に強化してきました。「より速く、より高く、より強く」というものです。男女の比較をすれば男性が勝るもので、その価値観だけでは「男性優位のスポーツ界」につながります。スポーツは、楽しむことが基本にあり、互いに尊重し合ってより良い人間関係や地域を作れること、自己内省が行えることなど、違う価値観を大事にすることが必要だと思います。

 最近は、スポーツ界の会議に女性が参加し、発言することが増えてきました。とても良いことだと思います。私は、女性が少なかった時代にスポーツ記者になり、だからこそセクハラを問題だと感じ、宣言を採択する場で発言できました。物事を決定する場に女性が入っていくことも、セクハラをなくす上でとても大事なことだと思います。

(了)

プロフィル

 みやじま・やすこ 1955年1月生まれ。77年テレビ朝日に入社。アナウンサー兼ディレクターとして80年モスクワ五輪から2018年平昌五輪までオリンピックを19回取材。17年、日本オリンピック委員会(JOC)女性スポーツ賞受賞。現在は一般社団法人カルティベータ代表理事。スポーツ文化ジャーナリスト

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