「コロナ禍の中で持続可能な身体活動について」2020横浜スポーツ学術会議・公的プログラムから WHO身体活動対策責任者フィオナ・ブル氏&スポーツ庁長官鈴木大地氏
2020年9月横浜でオンライン開催された国際スポーツ学術会議。この中でパブリックプログラムとして、身体活動に関する話がWHOの身体活動対策責任者と、日本のスポーツ庁長官から披露された。その内容をここに記すこととする。
「WHO世界行動計画(2018-2030)について」元研究者でもあるWHO身体活動対策責任者フィオナ・ブル氏
本日のテーマは以下の通り。
1:世界的な健康の優先順位―身体活動の重要性
2:身体活動のグローバルアクション計画
3:コロナ禍においてもアクティブにいるために、挑戦と機会
4:健康―スポーツとのパートナーシップ
世界的な健康の優先順位―身体活動の重要性
身体活動のメリットに関してはこれまで世界中で研究がなされ、身体活動が多ければそれは誰にとっても有益であるというエビデンスがある。今年新たなガイドラインを発表する。
どんな身体活動でも少しでもやるとよい。週に150分から200分ぐらいやるとよい。もっとやればそれに越したことはない。WHOが推奨しているのは定期的に運動をすること。
年に320万人から500万人が死んでいるが、以下の病気でそれぞれ予防が可能である。
特に心臓病疾患6% 糖尿病7% 大腸がん10% 乳がん10%
これがSDG’sの目標でもある。
すべての死亡のうち71%が悲感染性の疾患。成人の4分の1は身体不活動の状態。また青少年の若い形成期15歳から18歳においても4分の3がスポーツをしない、やめているという現状がある。
世界の成人を見てみると、男性の4分の1、女性の3分の1がこの15年間身体活動をしてこなかったという現状がある。この線を2030年までに15%減らしたい。
ラテンアメリカン。高所得の西欧諸国とアジアがかなり高く、最も高いのが南アジア、そして男女の差も目立つ。
2001年から20016年を見てみると高所得のアジアが世界的に身体不活動の状態がトレンドになっています。ラテンアメリカも高所得の西欧も増えている。
日本はちょうど真ん中に位置しています。世界全体も日本も努力してほしい。人口の半分ぐらいが推薦された水準を満たしておらず不活発な状態。
いずれにせよ所得別に比べると、高所得の人たちの身体不活発が顕著で、いつも小さなスクリーンを見ているといえる。パラダイムの変換が必要だ。
WHOは2030年までにこの身体不活動を15%減らす必要がある。
行動分野としては4つがある。
1:活動的な社会を作ろう 新しい標準と態度を作る。若者だけでなく高齢者も。そのためには教育プログラムやコミュニケーションが必要だ。
2:活動的な環境を作る。安全で便利な場所。都市の設計。自転車や歩道の整備。自動車を運転するというだけではない都市の設計を今一度する。ボコタでは毎週170キロの距離を自転車に乗れるようにしている。これは一つのいいロールモデルだ。
3:活動的な人々を作る。人々を巻き込んでいく。職場で休憩中には歩き、階段を使う。学校では体育プログラム。スポーツプログラム。競争だけでないプログラム。育児も座って眠っているだけでない方法。女性や障がいを持った人たちも。
4:活動的なシステムを作る リサーチ、科学、市民社会、政府、国制作、策定、モニタリング、すべてこれらをコラボレーションする。みんなが協働して初めて始まる。
医者のアドバイス、学校からのアドバイス。政府からの発表など、すべての要素をしっかりつなげていく。
グローバルアクションプランというのを各国の独自の政策の中でSDG’sの達成のためにやっていく。
WHOで10のエリアを作った。現在ガイドラインを刷新している。
若者、大人、高齢者の3つのカテゴリーだけでなく、慢性疾患、妊婦、障がい者も含めて今年11月に完成するので、日本語に翻訳してこれをもとに進めていってほしい。
デジタル技術も使って、スマホなどを使って座っている生活からもっと動きましょうと進めるようにしている。
学校の体育の授業は15歳から18歳、きちんとやっているだろか。歩行、自転車はどうでしょうか。こうしたこともきちんと評価していくようにしている。
WHOは全体的なインパクトで評価していく。
次に新型コロナウイルス(Covid-19)について。
今までの行動がストップしてしまった。コロナの中で、機会も生まれてきている。自転車の利用など。Be Active というのが新しいメッセージ。
新しいニューノーマル。今まで以上にオンラインなどを活用しながら進めていく必要がある。学校は身体活動や体育の機会を提供し続けなくてはならない。公園、パブリックスペースをうまく使う。アジアではオープンスペースで太極拳やヨガなどが行われている。こうしたアジアのやり方を欧米も学ぶ必要があるだろう。
スポーツと共同して、動く。
IOCの会長と、WHOの事務局長が共同で5つのシナジーを求めていくこととなった。
こうした一連の動きをサポートしてそれを喧伝していく。オリンピックゲーム オリンピックレガシー。オリンピックムーブメントを通じてアクティブな活動をしていく。オリンピックだけでなくそれぞれの国際競技団体も同様である。
共同と一貫性が必要であろう。
最後に、SDG’s スポーツの利益や身体活動の利益を享受するためには、今動く必要があり、それを拡大していく必要がある。
・身体活動というのは健康に必要である。地域に必要である。環境に必要である。そして、経済にも。ウィン、ウィン、ウイン、ウィンの関係
・エビデンスベースで効果的なものをまとめて進めていく
・パートナーシップをとってこそインパクトが出てくると思う。
コロナというのは機会を提示してくれているということである。
スポーツ庁が目指しているもの
鈴木大地長官
日本は1万人ぐらいの溺死者がいるので、水泳の日というのを作って、みんなが泳げるようにした。選手の時は自分が強くなることを考えてきたが、そのあとは世のためということを考えてきた。東京オリパラの招致も行ってきた。そしてスポーツ庁長官になった。
文部科学省の外局としてスポーツ庁と文化庁がある。
健康に関しては、厚生労働省が管轄している。
スポーツ庁というのは、7つの課がある。
この中にスポーツと健康という課が設置されている。
第二期スポーツ基本計画というところで作っている。
昨年はラグビーのワールドカップが開かれた。盛り上がり大成功。スポーツに関する興味が膨らんできた。そして迎える2020年となるはずだったが、コロナで小休止というところ。来年は東京五輪を開催するためにはどうしたらよいかということを考えて動いている。来年は関西でワールドマスターゲームが開かれる。ライフタイムの大会。参加料さえ払えばだれでも出場できるという大会。
第二次基本計画の中で4本の柱を考えた
①人生を変える。
②社会を変える
③世界とつながろう
④未来を作ろう
そして、日本の人口1億人、一億総スポーツ社会を目指し日本の未来にレガシーを残すことを目標としている。
スポーツ庁が4年前にできた。
- 気晴らしという言葉がスポーツなので、競技者だけが楽しむのではなく、一般市民が楽しむスポーツの垣根、ハードルを下げるようにしてきた。
- スポーツを見るというかかわり方
- スポーツを支えるというかかわり方。
多くの人を巻き込みながらスポーツを大きくしようとしてきた。
スポーツ実施率。成人の週一回のスポーツ実施率。週3回のスポーツ実施率
27%から現在は53%ぐらいまで伸びてきている。
年代別にみると、20代がスポーツをあまりしていない。50代までが平均を下げている。
70代の人はとても良く行っている72%
できない理由は忙しい。めんどくさい。
そこで実施率向上のための行動計画を作った。子供、女性、ビジネスマン、障がい者などそれぞれに行動計画を作った。
スポーツを行うことが生活の一部になるというような人を増やしたい。
Sports in Life
2020年大会のレガシーとしてはメダルの数だけでなく、一般の国民がスポーツをどれだけするようになるかというのをレガシーとして残したいと考えた。
スポーツ庁はビルの13階にオフィスがあるので階段を上るようにしている。スポーツ in ライフ。
勤務の前や後にスポーツをするというのを組織的に、朝活、夕活としてやる。
日本のプールは10時オープンだったものを7時からにしてもらった。ひと泳ぎしてから出金というスタイルを作った。
ビジネスマンの忙しい人には、一駅前でおりて歩く、ランチはちょっと遠いところまで足を延ばしていってもらう。楽しみながらウォーキングを取り入れてもらおうというfun +walk
チコちゃんも一緒に踊ろうと。ダンスは女性にはとてもいい運動となる。
地域におけるスポーツ環境を整えていくことの大切さ。
医療機関と連携をとって疾患を持った人たちにもスポーツを取り入れてもらう
障がいを持った人たちもスポーツを取り入れる。
エビデンスを基礎とした健康とスポーツ
海外の事例
Exercise is Medicine
医療費の高騰を抑える。スポーツの推進につなげる。
健康行政をつかさどっているのは日本では厚生労働省だが、省庁の垣根をとってスポーツ庁と手を携えて仕事相乗りして行うようにした。
日本学術会議にもエビデンスベースの政策決定をするときに、学者の人たちにお願いしてアイディアやエビデンスをもらうようにしてきた。スポーツは本当に健康にいいのかなど。
日本医師会とも連携をして、健康な国民をするために適度な運動は必要であるという意見お済付きをいただいた。
今年の政策としては疾病を持った方にも運動処方のようなスポーツをしてもらおうという試みを今年進めていきたい。病院とスポーツ施設のコラボ。
それぞれのスポーツ業界が得意なものをテーブルに載せて、新しいものを載せて、社会課題を解決していこうという試み。テクノロジーを融合させて難しい社会課題の解決にもつながっていくのだろうという考え方。
アウトドアツーリズムや武道のツーリズム。
海外から期待されているもの:相撲、武道、
コロナ禍の中で、どのようにスポーツ界に予算措置ができるのか。
スポーツをやめるという人が増えないように雇用や事業を続けるための施策。
金銭的な支援。
大会開催のために資金を出す
スポーツの力をこういう時代だからこそ示していきたい。
スポーツは私たちの体と心に元気をくれて、潤いを与えてくれる。
仲間づくり。部活動、散歩、サイクリングなど、コロナ禍の中でも、新しい生活様式の中でスポーツをしていくことが重要だろう。
スポーツを行うことで健康になる、WHOにもスポーツともってコラボしてほしいとお願いをした。
これが新しくできた国立競技場。ここで来年お待ちしている。コロナに打ち勝って、証として世界中の人とともに祝い、分かち合いたい。
以上、
書き起こし:宮嶋泰子