一般社団法人カルティベータ |
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2020.11.29
スポーツ・芸術・文化 社会を変える!

今だから話すハラスメント問題 その内幕 

2013年のスポーツ界における暴力根絶宣言、その内幕。

2013年に「スポーツ界における暴力根絶宣言」が採択されました。まさにスポーツ界をあげての宣言でした。というのも、4月25日日本青年館の大ホールに集った人々は日本オリンピック委員会、日本体育協会(現:日本スポーツ協会)、日本障がい者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟(高体連)、日本中学校体育連盟(中体連)の関係者821名で、5つの主たるスポーツ団体が日本のスポーツのターニングポイントとして宣言を採択したのです。

私はこの宣言が行われた時、日本女子柔道代表に対して指導者が行った暴力行為に端を発した問題を解決すべく全日本柔道連盟の「暴力根絶プロジェクト」のメンバーでした。様々な意見が出されていくその過程は、これまでの人生の中でこれほど濃い会議はなかったと言えれるほど熱い議論が連日交わされて行きました。

その結果として、2013年4月のスポーツ5団体が結集して行った「スポーツ界における暴力根絶宣言」へとつながっていくのですが、一つこの中の文言には採択される直前まで決定的な欠陥がありました。

「殴る、蹴る、突き飛ばすなどの身体的制裁、言葉や態度などによる人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせ、これらの暴力行為は、スポーツの価値を否定し、私たちのスポーツそのものを危機にさらす。・・・」とありました。

発表される前のこの草案を見せていただいた時に、なぜここに「セクシャルハラスメント」が入っていないのかと個人的に質問しました。私はこの草案を作ったメンバーには入っていませんでしたので、決定稿を出す前に会議でもっと揉んでほしいとお願いをしました。しかし、その会議では、多くを議論することもなく、男性のメンバーから「それは必要ないでしょう」と言われ却下されてしまったとのことでした。

とてもいやな気分でした。それまで35年もスポーツの取材をしてきて、いたるところでセクシャルハラスメントの話を聞いていました。なぜこれを入れてくれないのだろうかと不思議でした。

同様に、あるスポーツ学会でハラスメントの問題を議論する時にも「セクシャルハラスメントは学会では扱いません」と言われ愕然とした覚えがありました。一体なぜ?女子アスリートや女子スポーツ関係者が一番直面しているハラスメントがこれなのに・・・その時、私は不思議でなりませんでした。

そこで、日本青年館大ホールで「スポーツ界における暴力根絶宣言」が採択される日、私はこの草案を作った人と相談をして、ある作戦に出たのです。この日の会議が粛々と進み、最後に「会場から何かご質問はありますか?」と聞かれた時に、手を挙げたのです。

本当に意を決してこの発言を行いました。

「なぜここにセクシャルハラスメントが入っていないのでしょうか。これまで多くの被害を受けた女性アスリートの話を聞いてきました。是非セクシャルハラスメントを入れてください」

会場はシーンとなりました。

議長から「皆さんいかがでしょう。今、提案がありました。ここにセクシャルハラスメントを入れたいと思いますが、いかがでしょうか」

会場からは拍手が起こり、セクシャルハラスメントはこの宣言の中に入ることになったのです。本当にうれしかったです。

ある大学の女性スポーツ学を専門とする教授から「新しいページを開いたね。時代が動いた。ありがとう」という言葉をもらいました。

その時はただただ必死だったのですが、今、思うと本当に時代が動いた瞬間だったのだと思います。そこにセクシャルハラスメントが入っていなかったら、ただの暴力防止だけになってしまっていたでしょう。女子アスリートのことを皆が真剣に考えてくれるようになったのもその頃からだったように思います。

攻撃は最大の防御か? ハラスメントをした人間は、ハラスメントされたと言って逃げる!

あれ以来、多くのハラスメント問題を見てきましたが、最近ちょっと気になることがあります。

「攻撃は最大の防御なり」とばかり、ハラスメントを行った本人が追及されそうになると、自分は他の人からハラスメントを受けていると言って、自分がハラスメントを行ってきたことへの視線をかわそうとする事例が出てきているのです。

体操の塚原夫妻がハラスメントをしたと言いつのった体操選手とそのコーチもそうです。最終的に、第三者委員会で塚原夫妻にはハラスメントはなかったと判断も出されました。しかし、正規の申し立てルートではなく、突然マスコミの前で発表をするというセンセーショナルな形を取ったことにより、若い女性にマスコミは肩入れをします。マスコミの前でとんでもない「論点ずらし」をして、自分たちの暴力沙汰から目をそらすように操作しました。ある意味、女子選手もコーチや弁護士に操られ、被害者ということも言えるかもしれません。しかしその結果スポンサーまで付いたのですから、チームとしては大勝利というべきでしょう。私は、これを仕組んだ弁護士がスポーツを食い物にしたと思っています。そしてろくに取材もせず言いつのったメディアの記者やコメンテーターの罪も大きいです。私はあの体操選手を暴力で支配しているコーチの問題を半年も前から追っていたのです。

また、警察筋の話によれば、メディアがスポーツのハラスメント問題を大きく取り上げたのは、前総理のモリカケ問題をワイドショーの俎上に上げないためだったとの情報も「官邸ポリス」という本の中に書かれています。これまたスポーツが隠れ蓑として利用されたと思うと、いやはや・・・・という心境です。

最近また、自分でハラスメントをしておきながら、平気でハラスメントされたと言いつのる輩に出くわしました。

攻撃は最大の防御ですか?

なんだか人間がゆがみ始めているように思います。

実はこんなことを急に書いたのは、この新聞が出てきたからです。2018年5月9日の第11回女性スポーツ勉強会の様子を取材してくださったThe Shakai Shimpoのものです。本当に世の中変わってほしい・・・と強く思います。

Reported by 宮嶋泰子

宮嶋泰子


スポーツ文化ジャーナリスト。 (一社)カルティベータ代表理事。1977年にテレビ朝日にアナウンサーとして入社。1980年のモスクワ五輪から2018年平昌五輪まで五輪現地取材は19回。ニュースステーションや報道ステーションでスポーツ特集を制作するディレクター兼リポーターとして、スポーツを通して世界の文化や問題を考える番組を制作し続けてきた。2020年2月に独立して現在に至る。
日本障がい者スポーツ協会評議員、日本新体操連盟理事、日本プロバスケットボールリーグ理事、日本オリンピック委員会広報専門部会副部会長、国連UNHCR協会理事。順天堂大学客員教授。

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